ボーナスの平均額を見て、自分の支給額との差が気になることがあります。ただし、平均がどの企業や働く人を対象にしたものかで、読み取れることは変わります。
本記事では、経団連・厚生労働省・帝国データバンクの集計の違いと、額面から社会保険料や税金が引かれる仕組みを整理します。自分の支給額を考える際の確認項目も紹介します。
情報は2026年10月18日時点のものです。制度・税率・金額は変わることがあります。最新の条件は公式サイトでご確認ください。出典は記事末尾にまとめています。
本メディアは制度や仕組みの解説を目的としています。特定の金融商品・保険商品の購入をすすめるものではありません。投資には元本を下回るリスクがあります。試算は前提によって変わり、将来の成果を保証するものではありません。
- 平均額は対象企業、対象者、集計方法をそろえて読みます。
- 賞与の支給条件は就業規則などで確認します。
- 賞与の額面と、税金・社会保険料を差し引いた手取りは異なります。
基礎知識:平均と調査対象
大手企業の労働組合の妥結額、企業アンケート、事業所統計では、対象が異なります。同じ平均という言葉でも、そのまま横並びに比較できるとは限りません。
人数の多い企業ほど集計への影響が大きくなる平均の取り方です。企業ごとに同じ重みで計算する単純平均とは結果が異なる場合があります。
賞与の額面からは、条件に応じた社会保険料と源泉所得税などが引かれます。同じ額面でも、加入先や年齢、前月の給与などによって手取りは変わります。
大手の平均と自分の支給額を直結させない
経団連の2026年夏季賞与の最終集計は、163社で平均104万2,537円でした。原則として従業員500人以上の大手企業が対象で、人数を反映する加重平均です。[s1][s2]
平均を読む前に対象を確認
この「平均」の3つの条件
大手の会社
原則 従業員500人以上
人数で重みをつける
組合員の数で平均
集計できた会社
248社のうち163社
帝国データバンクの企業アンケートでは、正社員の平均支給額として47.7万円が示されています。これは同社の調査結果であり、経団連とは対象も方法も違うため、この差をそのまま大手と中小企業の格差とは読めません。[s14]
年間の賞与と一回の賞与も区別する
厚生労働省の毎月勤労統計では、賞与を支給する事業所に限った平均と、支給のない事業所を含む平均を区別できます。支給の有無を含めるかどうかも、数字を変える条件です。[s6]
国税庁の民間給与実態統計調査で示される平均賞与は年間の合計です。夏や冬の一回の支給額と比べる前に、対象期間と正社員以外を含むかどうかを確認します。[s8]
支給条件と年収の構成を確認する
厚生労働省のモデル就業規則の解説では、賞与の制度自体は法律上の義務ではないとされています。支給する場合には、対象時期、算定基準、査定期間、支払方法などを明確にする必要があります。[s9]
賞与への依存度を比べる架空の例
A社とB社(作った例・額面)
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 月給 | 35万円 | 45万円 |
| 年間のボーナス | 180万円 | 60万円 |
| 年収 | 600万円 | 600万円 |
| ボーナスがゼロなら | 420万円 | 540万円 |
架空の比較では、年収が同じでも月給と賞与の配分が異なれば、賞与が減った場合の影響も変わります。生活費を考える際は、総年収と合わせて、支給が変動する部分の割合を確認します。
額面と手取りを分けて見積もる
賞与には健康保険料や厚生年金保険料などがかかります。源泉所得税は、通常、前月給与から社会保険料などを引いた額と扶養親族などの数をもとに求める税率を使います。[s10][s11][s12][s13]
賞与から社会保険料が引かれる試算
30万円のボーナスの手取り(試算・円)
協会けんぽ東京・40歳未満の試算
図の30万円の例は、協会けんぽ東京・40歳未満などを仮定した試算です。所得税を差し引く前の段階を示しているため、その数字を最終的な手取りとは考えないでください。
実践のポイント・まとめ
出典・参考文献
- [s1] 経団連「2026年夏季賞与 最終集計」 ↗ keidanren.or.jp
- [s2] 経団連「2026年夏季賞与 業種別の表」 ↗ keidanren.or.jp
- [s3] 経団連「2025年年末賞与 妥結結果」 ↗ keidanren.or.jp
- [s4] 経団連「2026年夏季賞与 第1回集計」 ↗ keidanren.or.jp
- [s5] 厚労省「令和8年民間主要企業夏季一時金妥結状況」 ↗ mhlw.go.jp
- [s6] 厚労省「毎月勤労統計調査夏季賞与」 ↗ mhlw.go.jp
- [s7] 厚労省「毎月勤労統計調査年末賞与」 ↗ mhlw.go.jp
- [s8] 国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」 ↗ nta.go.jp
- [s9] 厚労省 モデル就業規則「賞与」 ↗ mhlw.go.jp
- [s10] 国税庁 No.2523「賞与に対する源泉徴収」 ↗ nta.go.jp
- [s11] 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 ↗ nenkin.go.jp
- [s17] 日本年金機構「厚生年金保険料額表(令和8年度)」 ↗ nenkin.go.jp
- [s12] 協会けんぽ「令和8年度の保険料率」 ↗ kyoukaikenpo.or.jp
- [s13] 厚労省「令和8年度の雇用保険料率」 ↗ mhlw.go.jp
- [s14] 帝国データバンク「2026年夏季賞与の動向アンケート」 ↗ tdb.co.jp
- [s15] 帝国データバンク「2025年冬季賞与の動向調査」 ↗ tdb.co.jp
- [s16] 帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査」 ↗ tdb.co.jp
検証ファクト一覧を表示する(全24項目)
| ID | 確認した事実・仕様 | 出典 | 注意・補足 |
|---|---|---|---|
| F1 | 経団連の2025年年末の大手の平均妥結額は100万4,841円(164社・前年比+8.57%)。比較できる1981年以降で初の100万円台 | [s3] | |
| F2 | 経団連の2026年夏の大手の平均妥結額は、最終集計で104万2,537円(163社・前年夏季比+7.04%)。第1回集計(112社)は100万8,706円だった | [s1] [s4] | |
| F3 | 経団連の数字は、人数の多い会社ほど平均に効く加重平均。同じ163社を会社ごとの単純平均にすると約95.6万円 | [s2] | |
| F4 | 経団連の集計対象は原則従業員500人以上の大手248社で、うち集計できたのは163社 | [s1] [s2] | |
| F5 | 厚労省の「民間主要企業」夏2026は、資本金10億円以上・従業員1,000人以上・労働組合のある365社の平均が97万6,043円(+3.12%) | [s5] | |
| F6 | 帝国データバンクの夏2026(1,043社へのアンケート)の正社員1人あたりの平均支給額は47.7万円(前年45.9万円)。30万〜50万円未満が37.0%で最多 | [s14] | 会社の調査。平均の出し方は書かれていない。対象は経団連と別 |
| F7 | 厚労省の毎月勤労統計(5人以上)の夏2025は、賞与のある事業所の1人あたり42.6万円、賞与のない事業所を含めた全労働者の1人あたり36.1万円。賞与のある事業所で働く人は84.6% | [s6] | |
| F8 | 厚労省の毎月勤労統計の年末2025は、賞与のある事業所の1人あたり42.5万円(+2.8%) | [s7] | |
| F9 | 国税庁の調査(令和6年分)で、1年を通じて勤務した給与所得者の平均賞与は75万円(+4.5%)。1年の合計 | [s8] | 正社員以外を含む。サンプル調査 |
| F10 | 帝国データバンクの夏2026:賞与の平均支給額が「増加する」企業は37.1%(大企業44.4%・中小企業36.0%・小規模企業31.4%)。大企業と小規模企業で13.0ポイント差 | [s14] | 会社の調査。「増加」の割合で、金額の差ではない |
| F11 | 帝国データバンクの冬2025:増加22.7%・変わらない44.7%・減少13.2%・賞与なし12.0%(賞与を支給80.5%)。冬と夏は別の調査 | [s15] | 会社の調査 |
| F12 | 厚労省の毎月勤労統計の夏2025で、賞与のある事業所の1人あたりの賞与は、製造業が+7.4%、卸売業・小売業が−0.7%、医療・福祉が−0.3% | [s6] | |
| F13 | 経団連の業種別(夏2026・最終)から、主な業種を選んで見せる(建設202.7万円・食品122.1万円はより高いが、建設は3社と少ないので使わない。「いちばん高い」とは言わない):造船129.0万円、電機114.2万円、自動車114.1万円、化学106.4万円、鉄道94.8万円、情報通信88.3万円、航空70.8万円。前年より下がった業種もある(鉄鋼−3.8%・商業−3.6%など) | [s2] | |
| F14 | 帝国データバンクの価格転嫁率は39.9%(2026年7月調査)。コストが100円上がっても、販売価格に反映できるのは約40円。前回(2026年2月)は42.1% | [s16] | 会社の調査。1万518社の回答 |
| F15 | 価格転嫁が「2割未満」の会社が24.5%(最多)、「全く転嫁できない」が11.9%、「すべて転嫁できている」は3.4% | [s16] | |
| F16 | 価格転嫁率は規模が小さいほど低い:大企業41.6%・中小企業39.7%・小規模企業38.3%。人件費は32.0%、原材料費は47.3% | [s16] | |
| F17 | 帝国データバンクは、価格転嫁できずコストを企業が負担し続けると、利益を圧迫するだけでなく賃上げや人材確保、設備投資を抑制する要因となりかねない、と分析 | [s16] | |
| F18 | 賞与は法律で設けるよう義務づけられたものではない。支給するなら就業規則に支給対象時期・算定基準・査定期間・支払方法を書く。支給日に在籍した人だけに払う決まりも可能 | [s9] | |
| F19 | 賞与にも社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)がかかり、所得税は前月の給与から社会保険料を引いた額と扶養親族の数で決まる率で引かれる | [s10] [s11] [s12] [s13] | |
| F20 | 担当者の30万円のボーナスの社会保険料(本人分)は44,070円で、税の前の手取りは255,930円(作った例) | [s11] [s13] | |
| F21 | 和菓子ECショップ(作った例):材料費が50円上がり、20円だけ値上げ。転嫁率40%・利益は1個100円→70円 | — | |
| F22 | A社・B社(作った例):年収はどちらも600万円。ボーナスがゼロだとA社420万円・B社540万円(額面) | — | |
| F23 | 2026年冬の確定の数字は、経団連が12月下旬(2025年は12月24日)、帝国データバンクが11月調査・12月公表(2025年)。10月18日時点では、まだ無い | [s3] [s15] | |
| F24 | 企業の声(帝国データバンク):「業績向上を受けて賞与を増額したが、中東情勢が不透明で、この状態が続けば冬季賞与は減額の可能性が高い」(機械・器具卸売)。一方、価格転嫁が十分でなくても人材確保のために賞与を引き上げる会社もある | [s14] | 1社の声。全体の見通しではない |
※ 図の金額や企業の比較は説明のための架空の例です。賞与30万円の試算は令和8年度の協会けんぽ東京・40歳未満などを前提とし、所得税は含みません。
※ 統計・アンケートごとに調査時期、対象、平均の計算方法が異なります。2026年冬の確定額を示す記事ではありません。